ブロントが死んでしまった。雷に撃たれた身体はズタズタのぐちょぐちょになっていた。嘗て敵との戦闘に勝利したあたしを抱き締めてくれた腕は焼け焦げていて美味しそうなような気持ち悪いような不思議なにおいがした。あたしも皆も呆然としてしまって立ち竦んでしまった。一番初めに声をあげたのはジルバで、なんで、と動いた口をあたしはじぃっと見ていた。ジルバの視線の先にある肉を見たいとは思わなかったけれど、やっぱり見てしまった。でもただにおいばっかりが口の中に広がっていて、縫いあわせられたように唇は開かなかった。次いで皆が各々にブロントに駆け寄った。リンはよろよろと近づいて途中でへたと座り込んでしまっていたし、テミとティンクは千切れているブロントの手らしきものを握って必死で杖を翳していた。あの鉄面皮なクロウでさえ、少し遠くから狂ったように何度も杖を振っていた。ブルースは金髪の球体を抱き締めて顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。その横でなんで、なんで、と壊れたように呟き続けるジルバがいて、あたしはそれを見て吐き気がして、でも立っていた。こんな状況がきたら小心なあたしのことだ、足は震えてがくがくしちゃうだろう、といつだったか思っていたのに、逞しく大地に根を張っていた。それでもやっぱりだめだ、と思った。もういきていけない。あたしたちは皆で、雷に撃たれるのを待っているみたいに、声にならないのに吼えていた。喉がひゅっと音をたてて、あたしはまた、いきていけないと思った。背後に敵の気配がしたけど、あたしは皆をじぃっと見ていた。ブロントだった肉を見ていた。

主がなくなった。ただそれだけのことだった、次の主まであと少しの間、自分を形作るものがない。ただそれだけだった。自分がない一時の思考は、だれのものなのだろう。産声が聴こえる。自分の、内側から、いかずちのような産声が。

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